『争続』『争族』について
民法(法律)に相続についてルールが規定されています。ご存知のとおり親に相続が発生すると子供に遺産が引き継がれます。これ以外の様々なケースも民法に基づく遺産の承継が行われます。
相続という制度は、時として、親族間に骨肉の争いというべき大きな紛争、いわゆる遺産争いを生じさせてしまうことがあります。そのため、争いが絶えない問題であるという意味で「争続」「争族」などと揶揄されることがあります。それほどに、遺産相続においては、実に頻繁に親族間においてトラブルが生じやすい問題です。
遺産相続の争いは、相続財産が全くないというのなら、さすがに争いは起きないでしょうが、しかし、相続財産が少ないからといって紛争が生じないというわけでもありません。遺産相続の紛争は他人事ではないのです。
『争続』『争族』になってしまうケース
①遺産が少ない場合
よくドラマなどでは、遺産争いは資産家の中で繰り広げられるものとして描かれます。しかし、意外に思われるかもしれませんが、遺産が少ない方が争族になる可能性が高いです。
司法統計(平成30年度)によると、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件の遺産の価額割合をみると、5000万円以下が実に76%と全体の4分の3以上を占めています。遺産が多いと、それだけ柔軟に各相続人に分配できますが、遺産が少ない場合、たとえば預貯金はあまりなく遺産として不動産のみ、自宅のみの場合だともめる可能性が高いです。
②生前に特別受益を得ていた場合
生前、被相続人から特別受益を得ていたとしても、ほかの相続人から主張され、もめるケースがあります。
被相続人から遺贈を受けたり、婚姻や生計の資本として贈与を受けた者は、それらの利益が特別受益として最終的な取得分に影響します。
つまり、遺産の前渡しとして他の相続人から特別受益が主張され、もめるケースです。
③前妻(前夫)との子供がいる
被相続人に前の配偶者との子がいた場合、その子も相続人となりますので、争続になりやすいです。
④特定の相続人が介護などのお世話をしていた
被相続人の生前に、介護のため特定の相続人がお世話をする、中には自分の生活を犠牲にし、同居して生活面の一切の面倒をみることがあります。介護をしている相続人としては、自分が一番苦労したからその分多く遺産をもらいたいと考えるのが通常でしょう。しかし、他の相続人としては、介護の問題と相続の問題とは切り離して、法定相続分に沿った、その貢献を考慮しない内容での主張がされ、争続に発展するケースがよくあります。
また、子の妻などが義理の両親のお世話をすることも少なくありません。しかし、義理の子は養子縁組をしていない限り相続人ではないため、遺産を相続することはできませんし、寄与分を請求することもできません。
(※なお、子の妻のような相続人ではない親族の貢献などに報いるため、新しく特別寄与料の制度ができました。改正民法1050条1項は「被相続人に対する療養看護その他の労務の提供により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者は相続開始後、相続人に対し寄与に応じた額の金銭の支払いを請求できる」と規定しています。)
⑤使途不明金等がある
被相続人の財産を管理していた相続人が、こっそり遺産を隠しているケースもあります。また、生前、通帳の履歴から多額の現金が引き出されている場合は、親から頼まれたと言われればそれを覆す証明をすることは困難です。使途不明金として争続、裁判に発展する可能性があります。
⑥遺言の有効性について
遺言で、自分の相続分を減らされている相続人が主張する可能性があります。つまり、遺言書作成時に認知症などで判断能力がなく、「遺言を作成することはできないはず」「その遺言は無効ではないか」と遺言の有効性を巡って争いになるケースです。
このような事が起こらないように遺言は公正証書で作成することが望ましいです。
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