不動産の相続登記について
不動産の名義人に『相続』が発生した場合、その名義を相続に基づき変更する必要があります。この手続きは法務局が管轄しています。市役所や税務署等ではありません。
数年前に相続が発生し固定資産税通知書を見ると相続人の名前に変更されていても、法務局の名義変更が済んでいない場合がよくあります。これは役所が固定資産税を徴収するために、不動産の名義変更をしていなくても役所が相続人調査を独自に実施するためです。法務局の名義を変更しない限り、不動産を処分したら有効活用するさいに弊害が発生します。
不動産相続登記をする際の注意点
相続人全員で協議し自分が不動産を取得することになった場合、必ず相続登記により自分に名義を変更してください。
相談者様の中には『不動産の名義は亡くなった父のままだが、長男である自分が取得する話になっている』だから自分のものだと主張される方がいます。これは非常に危険です。年月が経過した後にそれを実現しようとした場合、他の相続人が代替わりや認知症になっているなど、円滑な協力を得られないこともあります。不動産は自分の名義になっているからこそ、自由な管理処分が可能になります。くれぐれも相続の際の名義変更だけは忘れないようにお願い致します。
遺言書(公正証書・自筆証書等)がある場合
相続登記により自分の名義にするには、遺産分割協議か遺言書により変更することが一般的です。その中でも公正証書遺言を作成しておくと、非常に手続きがスムーズになります。遺産分割協議(話し合い)の場合、相続人全員の印鑑証明書や遺産分割協議書が必要になります。さらに戸籍謄本についても亡くなった方の出生から死亡まで遡って全て準備します。見慣れない戸籍を過去に遡って収集するのは大変な作業です。一方、公正証書遺言を作成している場合、かなり負担が軽減されます。なぜなら、公正証書遺言で自分の名義にする場合、その公正証書遺言、被相続人の除籍謄本、取得される方の現在戸籍謄本及び戸籍附票、評価証明書のみでたります。5点準備すれば単独で名義変更ができてしまいます。
なお、銀行の口座を解約する場合なども公正証書遺言を準備しておくと他の相続人の関与を必要とせず、銀行口座を解約できたりもします。
相続登記の義務化
不動産の所有不明土地などの問題を解消するため、法律が改正される予定です。
大きなポイントは次の4つです。
①相続登記の義務化と罰則
②氏名又は名称及び住所の変更登記の義務化と罰則の制定
③法務局による所有者情報取得の仕組みの制定
④土地の所有権放棄の制度化
①相続登記の義務化と罰則の制定
相続人が相続・遺贈で不動産取得を知ってから3年以内に登記申請することを義務化し、違反者は10万円以下の過料の対象とします。相続開始から3年以内に遺産分割協議がまとまらずに相続登記ができない場合は、法定相続分による相続登記をするか、自分が相続人であることを期間内に申請(仮称:相続人申告登記)すれば過料は免れます。相続人申告登記では、申請した者の氏名・住所などが登記簿に記載されることになります。ただし、法定相続分による相続登記や相続人申告登記をした後に分割協議がまとまって自らが不動産取得した場合は、それから3年以内に登記しなければやはり過料です。また、相続人に対する遺贈による登記や法定相続登記後の遺産分割による登記などについて、現行法では他の相続人等との共同申請となっているものが簡略化され、登記権利者が単独で申請することができるようになります。
②氏名又は名称及び住所の変更登記の義務化と罰則の制定所有者である個人や法人の氏名又は名称及び住所の変更があった場合は、その日から2年以内の変更登記申請を義務化します。違反者は5万円以下の過料対象です。
③法務局による所有者情報取得の仕組みの制定
法務局(登記官)が、住民基本台帳ネットワークシステム又は商業・法人登記システムから所有者の氏名又は名称及び住所の変更情報を取得し、職権で変更登記をすることができる仕組みを作ります。ただし、所有者が個人であるときは、本人への意向確認と本人からの申出を必要とします。
そして、この仕組みを可能とするため、今後新たに個人が不動産登記をする場合は、生年月日等の情報を法務局に提供することが義務化されます。ただし、生年月日が登記簿に記載されることはありません。法人の場合は、商業・法人登記システム上の会社法人番号等が登記簿に記載されるようになります。
また、国外に住所のある所有者に対しては、国内の連絡先となる者(第三者を含む)の氏名又は名称及び住所等の申告が義務化され、それらの情報が登記簿に記載されます。
④土地の所有権放棄の制度化相続等により土地を取得した者がその所有権を放棄して土地を国庫へ帰属させることが可能となる制度を新設します。対象となるのは「建物がない」「担保権等が付いていない」「土壌汚染がない」「境界について争いがない」「管理又は処分にあたって過分の費用又は労力を要する土地でない」等の条件を全て満たした土地に限られます。
※民法も同時に改正される見込みです。「相続開始から10年間遺産分割がまとまらなければ法定相続とする」等です。
以上
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