相続開始から3カ月?
相続放棄や限定承認は「相続人であることを知ったとき」から3カ月以内に家庭裁判所に申述します。
3カ月以内に相続放棄をしなかったときでも、その後に多額の借金があることが判明し相続放棄が認められる場合があります。実務でも6カ月経過後に多額の負債が発覚し相続放棄をしたケースがあります。
それぞれのケースごとに慎重に遺産分割・相続放棄・限定承認のどちらを選ぶかを検討しましょう。
相続放棄について
相続放棄は、各相続人の判断で各々選択することができます。相続放棄をすると、相続人でなかったことになります。つまり、プラス財産およびマイナス負債すべてについて相続をしません。相続に関して全くの他人になるイメージです。
注意する点は、相続放棄をしたら(するつもりだったとしても)遺産を処分したり利用したりする行為をしてはならないということです。これをすると単純承認といい、せっかく相続放棄した効果がなくなる恐れがあります。くれぐれも相続放棄をする際には、勝手な遺産処分等はしないよう気を付けてください。
ただ、実務的には、相続放棄後にもう価値のない服や什器備品などの遺産整理をせざるを得ない状況があります。この点は無価値であり保存行為として認められる程度の処分等であれば問題ないかとおもわれます。(専門家には必ず相談しましょう)
限定承認について
限定承認は、遺産の範囲内で債務の弁済義務を負い、自らの財産に負担を負わないという効果があります。例えば、1000万円の資産(遺産)・1500万円の負債がある方が亡くなった場合、通常の相続人は負債1500万円を遺産や身銭をきって支払います。一方、限定承認をした場合、遺産にある1000万円の範囲内で負債を支払えばよく、身銭をきる必要がありません。これが限定承認の特徴です。
限定承認をするには、相続人全員が限定承認を選択する必要があります。相続放棄と比べると大きく性質が異なります。
相続放棄?限定承認?
限定承認よりも相続放棄を選択するケースが実務的に多いです。その理由は、そもそも負債が多いのであれば債権者(取り立て)への関係性を無くすためにも相続放棄してしまった方が相続人の法的負担が軽減されるからです。
限定承認が利用されるケースは、例えば負債があるけれども残したい財産(実家)が存在し、且つ相続人自身のお金で買い取れる状況にある場合があげられます。相続人5名のうち4名が相続放棄し1名が限定承認をする。その限定承認をした相続人が裁判所を通して遺産を買い取ることで実家を守ることが可能です。債権者は換価された現金の範囲内で分配を受けることで限定承認の手続きが完了します。
なお、限定承認を複数の相続人でした場合、そのうち1名を相続財産管理人として選定し限定承認により遺産整理をすすめていくことになります。
限定承認の税務
限定承認で念のため知っておいた方がいいのが税金についてです。限定承認をすると『譲渡所得税』が課税されます。私が関与した限定承認でも税理士の先生や税務署から税務の指摘を受けました。その他申告期限(延滞税)の論点などがあり色々説明を受けましたが、税務と法務の違いが顕著に出る場面でした。限定承認をする場合には、必ず法務と税務の両方から対応していくことが大切になります。
ただ、あくまで遺産の範囲内で税金や負債を支払っていくことになりますので、その点は安心して限定承認手続きを選ぶことができます。
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